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養蜂・文明開化
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大和本草
貝原益軒著 宝永7年(1709)

蜜蜂の分類、蜂蜜の種類、偽物蜂蜜など楽しく読めます。

現代訳

本草を考えるに石蜜あり木蜜あり土蜜あり、人家に養う家蜜あり、すべて四種なり、日本にも又此の四種あり。 石蜜は高山岩石の間に此れを作る、其の蜂常の蜜蜂に異なり黒色にして虻に似る、日本にも所々此れ有り。
木蜜は陶弘景(人名)曰く樹枝に掛けて巣を作る、日本にも此れ有り。
人家に養うも本此れを取来る、又大木の空虚の内に房を作り南方より小穴を開けて出入りす、穴大なれば熊蜂入りて蜜蜂を喰い殺し蜜を吸い取る。
山にある木蜜は木の空虚の内に房を作る者多し、枝にあるは稀なり、土蜜は山の崖など乾きたる土中に房を作る、此の土蜜は日本にも稀にある。 人家に養うは諸州所々に多し。
木蜜、土蜜、人家に養う者此の三種は同蜂なり、常の蜂に似て小なり、色微黄なり、常には人を刺さず、
人さわれば刺す。 伊勢、紀州、熊野、尾張、土佐、其の外諸国より出ず土佐より出るを好品とす、何の国より出ても真蜜を好と為す。
蜂房の内所々に自ずから滴り溜まるをとり用ゆ、此れを真蜜とす、生蜜なり上品とす、薬に用いるべし。
蜂房を煎じ出して蜜とす、此れは下品なり薬に用いず。 煮熟せざる生蜜を用い我家にて煉熟すべし、
薬店に売るに真蜜あり、砂糖蜜あり、選ぶべし。 黒蜜は黒砂糖に酒と水とを加え煮て蜜と為す、
白蜜は白砂糖の煮汁なり、此の二品用いるべからず。
異邦諸国より来るにも真偽あり選んで用いるべし、又長崎にて蜜煎の果も糖煎多し。
蜜の真偽を試法、鉄の火箸を赤く焼きて蜜の中に入るゝ、煮たぎりて気泡出るは真蜜なり、煙出るは偽なり、此れ時珍(人名)が説なり。

  • 蜜を練る法、先ず陶器に蜜を布にて漉して入れ此の陶器を鍋に沸湯を沸かして入れ重湯にて湯煎し浮沫をヘラにてすくい去り蜜を少水に滴りて珠をなして不散を度と為す、壷に納め貯うべし。
    百六十匁(600g)を練て百二十匁(450g)を得るべし、此れの如くすれば年を経て腐敗せず。
  • 蜜を多く食うべからず、疳の虫、虫歯を生ず、小児もっとも戒しむべし、生葱、萵苣(ちしゃ、サラダナなど)と同食すべからず、蜜を食し飽きて鮨を食えば暴死す。
  • 蜜蜂の蜜を作るは春の末より秋の末まで出て花を含み花を翼と脚の間に挟み或は花の汁を含み来り、
    房中に塗り付けて醸して蜜となす、酒を醸すが如し、およそ蜜蜂はいたく風寒を恐れる、
    冬の初より出でず、房中に蟄居す、其の間は曾て醸して貯え置きたる蜜を糧とし食う、蜜は蜂の糧なり、故に蜜を取るに糧を残して取り尽くさず、取り尽くせば飢え死にす。
  • 時珍云う(以下漢文引用 時珍云う・「大便を用い醸す?」 
    陶弘景いわく・「人の小便にて醸す?」などと書いてあるようです。 ※解読できません)。
  • 蜜蜂を家に久しく養いて能知者数人の説を詳しく聞きしに蜂の大便、人の小便を用いると云える説、
    甚だ非なり、蜂毎日巣の内より多く出て其の口及び翼の間、股の間に花を鋏来りて房に塗り付けて醸し成せるなり、蜂の糞は皆下に集まる時々此れを取って捨つ、捨てざれば虫生して害あり、
    此の蜜は蜂の糞に非ず、蜂の蜜を醸すは糧にせんためなり、何ぞ我が糞を糧として食すべきや、
    此の理なし、又人の小便は汚らわしく塩あり、これを加うべき理なし、況や岩蜜、木蜜、土蜜は山中無心の所にあり人の小便を取れず、およそ蜜は百花の清潔なる精液を用いて作り出せるなり、
    蜂の大便人の小便を用ゆと云う事返すがえすひが言(僻言・まちがったこと)なり信ずべからず。
    (以下漢文引用 古人は一人の嘘が万人に真実の事と伝わる・・・。孟子曰く、すべて書を信ずれば、書無きに如かず・・・等と書いてあるようです。)
  • 蜂房は蜂毎年改めて作る、家に養うは蜂房を割りて房中に自ずから貯まれる蜜を取る此れ上品なり、薬となすべし。然れども多く得がたき故に蜂房を割りて1/3は残して糧とす、2/3を取て大器の上に竹を渡し並べ其の上に割り取たる蜂房を置きて天日に曝せば、蜜暖気に溶けて器中に滴り落つるを取る、此れ中品なり。蜂房を釜に入れて煮て蝋を取、其の後を煎じ詰めて蜜とす、此れ下品なり薬に入れるべからず。故に生蜜を上品とし熟蜜を下品とす。
  • 蜜蝋は蜜を煎して面に浮かぶ滓なり黄蝋と云う。


原文
振り仮名付けました。  ひっくり返って読む所は読み順にし、句読点、改行など適当に入れました。

種類多シ、ツチノ蜂ノ外、土蜂アリ、蜜蜂アリ、大黄蜂アリ、クマハチト云、又ヤマハチト云、人ヲサス大ナリ、又ジカバチアリ

蜜蜂 本草ヲ考ルニ、石蜜アリ、木蜜アリ、土蜜アリ、人家ニ養フ家蜜アリ、スヘテ四種也、
日本ニモ亦、此四種アリ、石蜜ハ高山岩石ノ間ニ之ヲ作ス、其蜂常ノ蜜蜂二異リ、黒色ニシテ虻ニ似ル、日本ニモ處々之有(これあり)
木蜜ハ陶弘景(とう こうけい、中国の医学者)(いわく)樹枝ニカケテ巣ヲ作ル、日本ニモ之有、
人家ニ養フモ本是ヲ取来ル、又大木ノ空虚(うろ)ノ内ニ房ヲ作リ、南方ヨリ小穴ヲ開テ出入ス、
穴大ナレハ熊蜂入テ蜜蜂ヲ喰殺シ密ヲ吸取ル、
山ニアル木蜜ハ木ノ空虚ノ内ニ房ヲ作ル者多シ、枝ニアルハ稀也、
土蜜ハ山ノ崖ナトカハキタル土中ニ房ヲ作ル、是土蜜ハ日本ニモ稀之有、
人家ニ養フ者此三種ハ、同蜂ナリ、常ノ蜂ニ似テ小也、色微黄ナリ、常ニハ人ヲ螫不(ささず)、人サハレハサス。
伊勢、紀州、熊野、尾張、土佐其外諸国ヨリ出ヅ、土佐ヨリ出ルヲ好品トス、
何ノ國ヨリ出テモ真蜜ヲ好為(よしとなす)、蜂房ノ内處々ニ自シタゞリタマルヲトリ用ユ、是ヲ真蜜トス生蜜ナリ、 上品トス薬ニ用可(もちいるべし)
蜂房ヲ煎ジ出シテ蜜トス是ハ下品ナリ、薬ニ用不(もちいず)、煮熟セサル生蜜ヲモチヒ我家ニテ煉熟スヘシ。薬肆(やくし、薬屋)ニ賣ルニ真蜜アリ、砂糖蜜アリ擇可(えらぶべし)
黒蜜ハ黒砂糖ニ酒ト水トヲ加ヘ煮テ蜜ト(なす)、白蜜ハ白砂糖ノ煮汁ナリ此二品ハ用可不(もちいるべからず)
異邦諸國ヨリ来ルニモ真偽アリ、可擇用(えらびてもちいるべし)、又長崎ニテ蜜煎ノ果モ糖煎多シ、
蜜ノ真偽ヲ試法、鐡ノ火箸ヲ赤クヤキテ蜜ノ中ニ入ルヽニタギリテ(いき)ノ出ルハ真蜜ナリ、(けむり)出ルハ偽ナリ、是、時珍(じちん、中国の本草学者、本草綱目を書く)カ説ナリ。

  • 蜜ヲ煉ル法、先、陶器ニ蜜ヲ布ニテコシテ入、其陶器ヲ鍋ニ沸湯ヲワカシテ入重湯ニテ湯煎シ浮ク沫ヲ
    (あわヲへら)
    ニテスクヒ去リ蜜ヲ少水ニ滴テヽ珠ヲナシテ散不(ちらず)度為ト(たびトなす)
    壷ニ納メ貯フヘシ、百六十匁(もんめ、1匁=3.75g)ヲ練テ百二十匁ヲ得ヘシ、此如(これのごとく)スレハ年ヲヘテ敗不(ふはいせず)
  • 蜜ヲ多食フヘカラス、しふ熱、虫とく(疳の虫、虫歯)ヲ生ス、小兒尤戒(もっともいましめる)ヘシ、
    生葱、萵苣(ちしゃ、サラダナなど)ト同食スヘカラス、蜜ヲ食シ飽テ(すし)ヲ食ヘハ暴死ス。
  • 蜜蜂ノ蜜ヲ作ルハ春ノ末ヨリ秋ノ末マテ出テ花ヲ含ミ、花ヲ(つばさ)ト足ノ間ニ挟ミ、或花ノ汁ヲ含ミ来リ房中ニヌリ付テ(かもし)テ蜜トナス、酒ヲ醸スカ如シ、
    凡蜜蜂ハ(いたく)風寒ヲ畏ル冬ノ初ヨリ出不(いでず)、房ノ中ニ蟄居ス、其間ハ(かつ)テ醸シテ貯ヘ置キタル蜜ヲ(かて)トシ食フ、蜜ハ蜂ノ粮ト也、故ニ蜜ヲ取ルニ粮ヲ残シテ取盡サス取盡セハウエ死ス。
  • 時珍云、(以下漢文引用 時珍云う・「大便を用い醸す?」 陶弘景いわく・「人の小便にて醸す?」などと書いてあるようです。 ※解読できません)。
  • 蜜蜂ヲ家ニ久シク養ヒテ能知者数人ノ説ヲ(くわし)ク聞シニ蜂ノ大便、人ノ小便ヲ用ルト云ヘル説甚非ナリ、蜂毎日巣ノ内ヨリ多ク出テ其口及翅ノ間、股ノ間ニ花ヲ挟来リテ房ニヌリ付テ醸シ成セルナリ、
    蜂ノ糞ハ皆下ニアツマル時々是ヲ取テスツステザレハ虫生シテ害アリ、是蜜ハ蜂ノ糞ニ非ス、
    蜂ノ蜜ヲ醸スハ粮ニセンタメ也、何ソ我カ糞ヲ粮トシテ食スヘキヤ、此理ナシ、又人ノ小便ハケカラハシク鹽(しお、塩)アリコレヲ加フヘキ理ナシ、(いわんや)岩蜜、木蜜、土蜜ハ山中無人ノ處ニアリ人ノ小便ヲ取可不(とれず)、凡蜜ハ百花ノ清潔ナル精液ヲ用テ作リ出セルナリ、蜂ノ大便、人ノ小便ヲ用ユト云事返ス々々(かえすがえす)ヒガ言ナリ、信可不(しんずべからず)
    (以下漢文引用 古人は一人の嘘が万人に伝わると真実の事と伝わる。孟子曰く、すべて書を信じれば、書無きに如かず・・・等と書いてあるようです。)
  • 蜂房ハ蜂毎年改作ル、家ニ養フハ蜂房ヲワリテ房中ニ自タマレル蜜ヲトル、是上品也、
    薬ト爲可
    (くすりとなすべし)
    ()レドモ多ク得難、故ニ蜂房ヲラリテ三分ノ一ハ残シテ粮ト(なす)
    三分ノ二ヲ取テ大器ノ上ニ竹ヲワラシナラヘ其上ニワリ取リタル蜂房ヲ置テ天日ニ曝セハ、
    蜜煖気ニトケテ器中ニ滴リヲツルヲ取ル、是中品ナリ、
    蜂房ヲ釜ニ入テ煮テ蝋ヲ取其アトヲ煎シツメテ蜜トス是下品ナリ、薬ニ入可不、
    故ニ生蜜ヲ上品トシ熟蜜ヲ下品トス。
  • 蜜蝋ハ蜜ヲ煎シテ面ニ浮フ(かす)ナリ、黄蝋ト云。

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